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挙体全身、一即多・多即一、八識、四種法界といった面白い部分はあるのですが、いかんせん構成が分かりづらく、結局華厳の思想って何だったのか、すっきりできないのが残念。
読んでみた私なりの解釈では、華厳経とは、挙体全身(精一杯)の雑華(個)が縁起で結ばれた世界をもって仏を説く、ということなのでしょうか。
それぞれの個に既に仏性が備わっているから、余分なものを削って清澄な状態になれば、仏性だけが顕れた状態、すなわち個として悟ったことなる。「初めて信を起こすとき、すなわち正覚を成す」である。悟った個は挙体全身である。
個と個は独立しあうものでなく、物としても心(理性)としても、実はどちらも密接に関連している。この密接な関連性は縁起といわれて、それは網の一部を持ち上げるとつられて周りも動くようなものに例えられる。
物と理性の間、そして物と物の間にも縁起があるとなると、逆説的に個の間の境目がなくなってきて、全て円融された世界になる。
挙体全身の個(=雑華)がわだかまりなく円融した世界こそが、時間的物理的にも超越した仏そのものである。
華厳の特徴としては、予め仏性を持っている、という前提があることかと。
まぁ、こういう事を書いてしまうと、「維摩の一黙」(=悟りは言葉で表現できないこと)をまったく理解していないと言われそうで微妙ですが。。。
本全体として、華厳経自体の解釈なのか、華厳経をとりまく歴史を説明する資料なのかが最後まで掴めなかった。著者の知っている短編をただ寄せ集めた印象が強い。
このタイトルだったら、華厳経自体についてもっと掘り下げて欲しかったです。あと他の経典との違い例えば法華経との比較なども書いて欲しかったですね。
華厳経について知りたい人より、周りの知識を埋めていくのにちょうどよさそうです。
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