2月8日の経済産業省事務次官北畑の「デイトレーダーは馬鹿」発言について。先週のニュースを漁っていたら、これが一番気になったので考えてみました。
「本当は競輪場か競馬場に行っていた人が、パソコンを使って証券市場に来た。最も堕落した株主の典型だ。バカで浮気で無責任というやつですから、会社の重要な議決権を与える必要はない」
競輪・オートレースは経済産業省の監督内だろ!
と思わず突っ込みたくなる。
自分の監督内で起きているギャンブル中毒症などに対しての何の施策もせず(海外では中毒者へのセーフティネットがある)に、ただそのギャンブラーを他人事のように批判する、そんな神経にあきれます。
その後陳謝して、明らかな暴言と取れるような表現は消えている議事録があったのでそちらも読んでみました。しかし根本的にまだまだ沢山問題があります。
http://www.meti.go.jp/topic/data/80208aj.pdf
会社は株主だけでなく社員および関係者のものでもある、という思想なのでしょう。FreemanのStakeHolder Theoryですね。
しかし、この中で「クビ切りをしないために、あえて不採算の福祉事業を運営している自動車部品工場」を礼賛しているのです。
まだ社会的意義としての福祉事業ならわかるけど、社員の雇用のためだから、という理由。株主にとっては明らかな不利益な行為です。
株主は最初に資本を提供してリスクを負っている。だからこそ、株主は利益を生んだら一部を配当として受ける権利がある。このあまりにも基本的な資本の原則を全て無視した考えです。
なぜ”働いただけで”株主としての権利が生まれるという論理になるのかわからない。
社員のものになるという考えは、メイドがある家庭に働いたらその家族の権利がもらえる、といっているようなものです。
社員はすでに労働の対価として給料を貰っている。その金で株を買ってもいいのだし、ストックオプションの制度もある。社員と会社で合意の上で働いているのだし、条件が合わなければ働かなくていい。
もし会社が損失を出したら、社員は借金を負ってでも資本を追加するべきとも考えるだろうか?
また、社員は40年間一つの会社を考えるのに、株主は短期でものをみるから良くない、という部分もよくわからない。社員は長期雇用が前提なのだろうか。長期雇用・短期雇用制度どちらもメリットもあるし弊害もある。
このような株式の短期保有は問題があって、長期保有だといいと論理は時々日経新聞でも同じ論調で見かけるけどどうしても納得いかない。
値動きだけに賭けることを生業とする職業の倫理性・生産性については、人それぞれの意見があると思う。でも、成長性に賭けるなら良い、というのも同じように人の考えによると思う。
成長性への予測が短期で株価に反映されたら、結果として短期保有と同じ行動をとるから一緒じゃないだろうか。
むしろトレーダーによる流動性で市場参加者にとって様々な機会が発生しているという意義を議論した方がいいと思う。もし行使機会が十分になかったら資本市場のリスクはより高まってしまう。十分なトレーダがいることで参加者のリスクをある程度減らすことができる。
言いたい事は沢山あるけど、一番憤るのは経済産業省の上層部にこのような意識を持った人が、こんな発言を不用意にしてしまうこと。
貿易立国から金融立国へ、とか、少し前には金融ビッグバンとか言って金融市場の活性化や海外資本への開放を日本として打ち出そうとしながら、こういった資本主義の根本を覆すような発言をしているようだと、海外からの信用を本当に失ってしまう。
資源がない国がどうあるべきかを真剣に考えるべきときに、日本だけで経済が成り立つ、という鎖国幻想を持っているように思える。香港・シンガポールを見習えば、どれだけ日本が金融市場で遅れてきているかははっきりしてきている。
このような発言を軽く受け流すべきでは決して無い。
政府一貫としてきちんとした日本の金融政策を海外にアピールしてほしい、そんな気持ちで書いてみました。
悲しいのは能力ない官僚が居座っているままで、定年退職を待っていることなのです。
日本の国家戦略はなんだろう。 原油などの資源争奪戦にどんな対策を取り組んでいる? イスラム金融などの新しい金融商品に対して、どんな手を打ってるか?